インプラント治療には2つの方法があります
これだけ聞くと「手術回数が少ない1回法のほうがいいに決まっている」と思われるかもしれませんが、2回法でしかインプラントを入れることができない患者さんもいるのです。また1回法は感染リスクが高まるというデメリットもあります。
1回法と2回法の治療の流れと、それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
一般的なのは2回法
2回法のインプラント手術の流れ
■1回目の手術
2回法の手術ではまず、局所麻酔を行った後、インプラントを入れる部分の歯肉をメスで切開します。顎の骨が露出したらドリルで穴をあけ、そこにインプラント体を埋め込みます。
インプラント体の上部に「ふた」をして、インプラント体を歯肉のなかに埋めるようにして、切開した歯肉を縫合します。
なぜ「ふた」をするのかというと、インプラント体の上部は「穴」があいているからです。2回目の手術でこの穴にアバットメントを挿入するのですが、穴があいたままでインプラント体を歯肉のなかに埋めてしまうと、穴の中に新しい骨や歯肉が入ってしまうのです。そうならないように「ふた」をします。
これで1回目の手術が終了です。
■3~6カ月おく
1回目の手術が終了したら、3~6カ月ほど安静期間をおきます。これはインプラント体と顎の骨を結合させるためです。骨は穴があくとそれを埋めようと新しい骨がつくられるのですが、穴にインプラント体が入っていると、新しい骨がインプラント体にまとわりつくようにできていくのです。
患者さんには安静期間の間に何回か通院してもらい、歯医者がインプラント体と顎の骨の結合具合を確認します。
■2回目の手術
インプラント体と顎の骨の結合が確認できたら、2回目の手術を行います。
局所麻酔をした後、再び同じ場所の歯肉をメスで切開します。インプラント体の上に新しい骨ができているので、「ふた」が出てくるまで新しい骨を削ります。
「ふた」を外して、インプラント体の上部の穴を露出させ、そこにアバットメントを装着します。
アバットメントを歯肉の外に出す形で歯肉を縫合して2回目の手術が終了します。
この後、人工歯(上部構造)をつくるために歯型を取ります。
人工歯をつくるのに1~2週間かかります。
■人工歯を取りつける
人工歯ができたら患者さんに来院してもらい、歯肉の上に露出しているアバットメントに人工歯を取りつけます。
噛み合わせを調整したら治療は完了です。
1回法のインプラント手術の流れ
1回法で使うインプラントは、インプラント体とアバットメントが1体になっています。この1体式インプラント体の上に、人工歯を取りつけるので、部品は2個しかありません。
■手術は「2回法の1回目の手術」とほとんど同じ
1回法の手術の前半は、2回法の1回目の手術とほとんど同じです。
局所麻酔→歯肉を切開→顎の骨にドリルで穴をあける→1体式インプラント体を埋め込む
ここまでは2回法の1回目の手術と同じで、ここからが1回法独自の工程になります。
2回法では、インプラント体を歯肉のなかに埋め込む形で歯肉を縫合しましたが、1回法では歯肉の上に1体式インプラントのアバットメント部分を露出させたまま縫合します。
また1回法ではアバットメント部分に仮の人工歯を装着することができます。仮歯はそれほど強度がないのですが、治療中の部分が仮歯で埋まるので、見た目がよくなります。
■3~6カ月おく
1回法の手術後もインプラント体と顎の骨が結合するのを待つため、3~6カ月ほどの安静期間をおきます。
■人工歯を取りつける
インプラント体と顎の骨が結合したら人工歯を取りつけるのですが、1回法ではすでにアバットメント部分が露出しているので、このとき手術することはありません。
仮歯を取り外し、そこに本物の人工歯を取りつけるだけです。
これで治療は完了です。
2回法のメリットとデメリット
●1回目の手術でインプラント体を歯肉のなかに埋めるので感染リスクが低い
●顎の骨が少ない人でも治療が受けられる
2回法のデメリットは次のとおりです。
●インプラントの構成が複雑で、かつ治療工程が多いので治療費が高くなる
●2回の手術を行うので患者さんの体の負担が大きい
1回法のメリットとデメリット
●インプラントの構成が単純で、かつ治療工程が少ないので治療費が安い
●1回の手術で済むので患者さんの体の負担が小さい
1回法のデメリットは次のとおりです。
●感染リスクが2回法より高い
●顎の骨が少ない人だと適用できないこともある
まとめ~歯医者としっかり打ち合わせをしよう
治療に取りかかる前にかかりつけの歯科クリニックの歯医者としっかり打ち合わせをして、納得できる治療法を採用してください。